メンバー

河合 研志

KAWAI, Kenji

准教授
固体地球科学講座

居室: 理学部1号館715
電話: 03-5841-4310
ファックス: 03-5841-8791
メールアドレス:
HP: http://utglobalseismology.org/

研究分野

グローバル地震学・地球惑星内部構造

研究内容

地球の中はどのようになっているのだろうか。地球はどのように進化してきたのだろうか。その問いに答えるため、私たちは現在の地球内部の構造を推定する研究を行っている。観測された地震波を解析することによって、地球内部の地震学的構造(地震波速度および密度構造)の推定を行う。得られた地震学的構造を鉱物物理学・岩石学の結果に基づいて解釈を行うことによって、現在の地球内部の温度や化学組成の空間分布や地球内部の流動や変形に関する情報などを得る。それと地球の表層に残されている過去の地質記録と照らし合わせることによって固体地球の進化を理解することを最終的な目的とする。

地球内部の地震学的構造を推定するために、私たちは地震波解析手法の開発を進めてきた。これまでは実体波の走時などといった二次データなどが用いられてきたが、私たちの研究グループは地震波形をデータとしてそのまま用いる波形インバージョン法の手法開発を行ってきた。その手法を実際の観測波形に適用することによって画期的な成果を上げつつある。たとえば、地球進化の理解に重要な熱境界層の一つの核・マントル境界直上の最下部マントルの速度構造を鉛直方向50kmスケールで推定し、過去に沈み込んだ古プレートの行方およびホットスポット火山の起源に関する新たな知見を得た。そして、得られた地震波速度構造を鉱物物理学に基づいて解釈し、核・マントル境界の温度をこれまでの見積もりよりも正確に3500℃と推定し、地球の熱史の理解に貢献した。

今後も引き続き、地震波動計算およびソフトウェア、データ解析手法の開発および新規地震波形の観測に取り組んでいくつもりである。一方で上記の固体地球の進化の総合的理解の目的を達成するためには、地震学だけでなく、鉱物物理学、岩石学、地球ダイナミクス、地質学、地球化学、といった異分野との積極的な連携および境界領域の開拓が必要である。そのために、地震波解析手法の開発およびデータ解析を主とするが、数値計算、データ解析、野外観測など様々な手法を一緒に取り組んでくれる挑戦的な進学希望者も歓迎する。

主要論文・著書

1. Borgeaud, A.F.E., K. Kawai, K. Konishi, and R.J. Geller, Imaging paleoslabs in the D′′ layer beneath Central America and the Caribbean using seismic waveform inversion, Science Advances, 3, e1602700, DOI:10.1126/sciadv.1602700, 2017.
2. Kawai, K. and T. Tsuchiya, Temperature profile in the lowermost mantle from seismological and mineral physics joint modeling, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 106, 22119-22123, 2009.
3. Sakuma, H., K. Kawai, I. Katayama, S. Suehara, What is the origin of macroscopic friction?, Science Advances, 4, eaav2268, DOI:10.1126/sciadv.aav2268, 2018.
4. 河合研志, 核マントル境界の温度構造および地球の熱進化, なゐふる, 94, 4, 2013.
5. 河合研志, 内出崇彦, P波初動の水平面内振動方向を用いた震央決定の教材:2011年東北地方太平洋沖地震の発生前後の飛騨地方の微小地震を例にとって, 地学雑誌, 128, 465-475, 2019.
6. 河合研志, ゲラー・ロバート, マントル最深部(D"層)の詳細構造 –新しい計算手法による推定–, 東京大学理学系研究科・理学部ニュース, 9月号, 2007.