メンバー

田近 英一

TAJIKA, Eiichi

教授
地球惑星システム科学講座

居室: 理学部1号館732
電話: 03-5841-4516
ファックス: 03-5841-4516
メールアドレス:
HP: http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/tajika/

研究分野

地球惑星システム科学,地球史学, 比較惑星環境進化学,アストロバイオロジー

研究内容

地球や惑星の表層環境の成立条件,それらの安定性・変動性・進化等のメカニズムの理解と実態解明を目指している.地球環境と生命は互いに密接な関係にあることから,地球環境進化の理解には生命活動の理解が欠かせない.逆に,生命進化の理解には地球環境進化の理解が欠かせない.たとえば,酸素発生型光合成生物の出現は地球表層の酸化還元環境を著しく変化させたが,環境中の酸素濃度の増加は好気性生物の適応進化を促し,さらにはヒトを含む複雑な動物の出現をもたらしたと考えられている.一方,生命活動には液体の水が必須であることから,地球のような「水惑星」の成立条件を解明することは,太陽系外惑星系に第二の地球が存在する可能性を探るためにも必要不可欠である.また,複雑な生命の出現には環境中の酸素濃度が高いことが必要と考えられるため,地球大気における酸素濃度の増加史やそのメカニズムを理解することも重要な課題である.環境中の酸素濃度の増加や変動は,生物の進化と絶滅に大きな影響を与えてきたものと考えられる.このような観点から,本研究室では,理論,数理モデリング,データ解析,フィールド調査などさまざまなアプローチを用いて,以下の3つの研究課題を推進している.
 
(1) 地球史を通じた地球システム進化の解明
地球史を通じた地球環境の進化や変動(とくに生物の大量絶滅が生じたと考えられる全球凍結イベント,小惑星衝突イベント,海洋無酸素イベントなど)を,気候モデルや物質循環モデル等を用いた理論的・数理的なアプローチに基づいて解明する.とくに,初期地球や太古代,原生代,顕生代の大気海水組成変動や気候変動を,地質学的・地球化学的データおよび数理モデルを用いて定量的に復元し,変動の原因やメカニズムを明らかにする.また,野外調査や岩石試料の化学分析に基づいて,当時の地球環境変動の実態を明らかにする.
 
(2) 地球環境と生命の共進化の解明
地球環境と生命が互いに影響を与え合って進化してきたとする,地球環境と生命の“共進化”の観点から,地球史における生態系や微生物の代謝活動と地球環境(酸素濃度などの酸化還元条件,酸素や二酸化炭素,メタンなどの大気化学組成,溶存酸素や主要・微量生元素濃度などの海水組成,気候条件,など)との関係について,太古代や原生代,顕生代,とりわけ酸素濃度が急激に上昇した原生代初期大酸化イベント(約22億年前)あるいは原生代後期酸化イベント(約8-6億年前)などに注目して,海洋生物化学循環モデリングや生態系モデリング,さらにはゲノム情報を用いた分子系統解析等から明らかにする.
 
(3) 太陽系及び太陽外惑星系における惑星環境の解明
地球の環境システムとは異なる,火星や金星の環境システムの挙動特性や気候変遷,氷衛星の内部海の物理化学環境,太陽系外惑星系における地球型惑星の環境進化や生命生存可能惑星(ハビタブル・プラネット)の存在条件などを,惑星環境モデリングとそれに基づく数値シミュレーションや理論的手法を用いて明らかにする.とくに,地球のような地球類似惑星や,地表面の水がすべて凍結した全球凍結惑星(スノーボール・プラネット)に注目して,それらのハビタビリティや進化を解明する.そして,ハビタブル・プラネットとしての地球の普遍性/特殊性を明らかにする.

主要論文・著書

1. Ozaki, K., Tajika, E., Hong, P.K., Nakagawa, Y., and Reinhard, C.T. (2017) Primitive photosynthesis and Earth’s early climate system, Nature Geoscience, 11, 55–59, doi:10.1038/s41561-017-0031-2.
2. Kadoya, S., and Tajika, E. (2016) Evolutionary tracks of the climate of Earth-like planets around different mass stars, The Astrophysical Journal Letters, 825:L21, doi:10.3847/2041-8205/825/2/L21.
3. Harada, M., Tajika, E., and Sekine, Y. (2015) Transition to an oxygen-rich atmosphere with an extensive overshoot triggered by the Paleoproterozoic snowball Earth, Earth and Planetary Science Letters, 419, 178-186.
4. 田近英一,「46億年の地球史」(知的生き方文庫),三笠書房,253p., 2019.
5. 田近英一,「宇宙生命論」(海部宣男他編)(編集,分担執筆),東京大学出版会, 212p, 2015.
6. 田近英一,「凍った地球−スノーボールアースと生命進化の物語」(新潮選書),新潮社,195p., 2009.