研究分野
熱帯気象学・降水気象学・気候変動
研究内容
地球気候の形成にマルチスケールの降水現象が果たす役割を解明することを主な目的として研究しています。扱う現象は、積乱雲やメソスケールシステムからエルニーニョや温暖化に伴う気候変化まで。研究室メンバーは各々の得意分野に焦点を当てて研究しています。研究手法は主に様々な地球観測衛星データや気象データの解析による現実の現象理解を基本としますが、全世界の気候モデルデータの比較解析や、全球雲解像モデルデータの解析も行っています。現象理解のために気候モデルや領域雲解像モデルなどを利用した研究も可能です。
数km規模の積乱雲が数10〜数100km規模のメソシステムを形成し、それが数千km規模の大規模システムとなり、さらにはエルニーニョなど遥かに時間スケールの長い気候現象に影響する仕組みをひとつずつ紐解いていくのは大変面白い仕事です。我々の成果として例えば次のことが解りました。熱帯域の数千kmの雲システムの振る舞いが、対流圏の赤道波に対応するユニークな分散関係を示す。1997-98年の大エルニーニョの最後のひと月に地球を一周した赤道の降雨システムがエルニーニョの終息を加速した。マッデンジュリアン振動(MJO)と呼ばれる赤道域の数千?規模降水システムの中に含まれるメソスケールの降雨バンドによる運動量輸送がMJOの速度や構造に影響する。気候モデルの中の積雲対流の表現に対流圏湿度依存性が足りないと、ダブルITCZと呼ばれる降雨分布誤差が出やすい。
熱帯降雨観測衛星(TRMM),全球降水観測(GPM)など衛星からの立体的な降雨レーダ観測データが長期間蓄積され、グローバルなレーダ気象研究や極端降水の解析が可能になりました。大気循環が降水特性を決める仕組みに関して多くの知見が得られています。最先端の衛星観測データを用いて中高緯度の降水現象と大気大循環の関わり雲降水形成の仕組みなどさらに多くの研究が期待できます。
主要論文・著書
1. Hamada, A., Y. N. Takayabu, C. Liu, and E. J. Zipser, 2015: Weak linkage between the heaviest rainfall and tallest storms. Nat. Commun., Vol. 6(6213), doi: http://dx.doi.org/10.1038/ncomms7213. 2. Takayabu, Y. N., S. Shige, W.-K. Tao, and N. Hirota, 2010: Shallow and deep latent heating modes over tropical oceans observed with TRMM PR Spectral Latent Heating data, J. Climate, 23, 2030-2046. 3. Takayabu,Y.N. , T. Iguchi, M. Kachi, A. Shibata and H. Kanzawa, Abrupt termination of the 1997-98 El Nino in response to a Madden-Julian oscillation, Nature, 402, 279-282, 1999. 4. 高薮 縁 2004.3 クローズアップ「エルニーニョを吹き飛ばした赤道上の積雲群」 パリティ vol.19 No.3、丸善 5. 高薮 縁 2003.10: 気象研究ノート第204号「モンスーン研究の最前線」 6. 高薮 縁, 上田 博, 隈 健一, 1998 : TRMMの科学的背景と意義. 日本 |