メンバー

佐藤 正樹

SATOH, Masaki

教授
大気海洋研究所

居室: 柏キャンパス大気海洋研究棟613
電話: 04-7136-6050
ファックス: 04-7136-6056
メールアドレス:
HP: http://cesd.aori.u-tokyo.ac.jp/satoh/index-j.html

研究分野

大気科学・気象力学・地球流体力学・数値モデリング・気候力学

研究内容

1) 大気大循環力学:ハドレー循環・熱帯の積雲対流と全球循環との関係など
2) 雲降水システム:台風、熱帯積雲クラスター、メソ循環
3) 数値モデリング:全球非静力学モデルから領域モデルまで、階層化数値モデル。NICAMの開発・改良など
気候・環境問題へのアプローチとして, 地球大気の循環構造を理論的に解明していくことを目標に研究をすすめている.ハドレー循環, ウォーカー循環, 低緯度と中緯度の相互作用, 圏界面高度, 角運動量輸送, ポテンシャル渦度分布, 水蒸気分布など, 大気大循環のさまざまなコンポーネントの変動要因を調べている. 例えば, 温暖化問題は, 二酸化炭素が増加したときに大気の気候状態がどのように変化するかという枠組みで問題設定することが可能である. 二酸化炭素の量を大気運動を規定する外部パラメーターとしてとらえれば, 外部パラメーターが変化した時に大気大循環がどのように変化するのかという問題に答えることが, 温暖化問題へのひとつの解答を与えることになる. 温暖化によって降水系がどのような応答をするのか, あるいは熱帯から中緯度にかけてのハドレー循環がどのように応答するのか, これらの問いに答えるためには, 放射・雲・水蒸気分布などの様々な要素の変化について明解に答えることができなければならない.
今, 取り組んでいる研究課題は, 熱帯の降水系の階層構造と大循環との関係である. 数 km の積雲スケールから数万 km の全球スケールまでの空間的階層, 日変化から季節内変動までの時間変動, これらがどのように連関して大気大循環を規定しているのか, また温暖化時にこれらがどのように応答するのか, 数値モデルの結果と観測データの比較, 理論的研究を組み合わせてすすめている.
大気大循環の理論的理解のための手段として, さまざまな階層の数値モデルを用いている. モデルの中には, 1次元放射対流平衡モデル, 2次元軸対称モデル, 2次元・3次元雲解像モデル, 3次元大気大循環モデルといった数値モデルがあり, また, 放射・雲・乱流といった物理過程にもさまざまな複雑性をもつモデルがある. これらを対象とする問題に即して縦横に用いて, 大気大循環に関して立体的な理解を目指している.
特に, 最近は, 開発した全球雲解像モデルによる気候研究を進めている. 水平スケール数 km で全球を覆う数値モデルによって, 熱帯の積乱雲や台風のマルチスケール構造をシミュレートすることができる. 熱帯の個々の積乱雲は, 大気の熱源として最も重要であり, 大気大循環の基本要素となっている. これらを解像した数値シミュレーションにより, 雲の分布, 水蒸気分布, 放射, 物質循環への信頼性が飛躍的に向上する.
同時に, 数値モデリングの技術向上にも継続的に取り組んでいる. 特に新たな移流スキームの開発を行っている. 自ら数値スキームを開発し, コーディングし, 数値モデルをつくり, それ使って科学的に意味のある研究を行う人材を育成することが目標である.

主要論文・著書

1. Satoh, M. (2013) Atmospheric Circulation Dynamics and General Circulation Models, 2nd Edition, Springer-PRAXIS, 757pp, ISBN 978-3-642-13573-6
2. Satoh, M., Tomita, H., Yashiro, H., Miura, H., Kodama, C., Seiki, T., Noda, A. T., Yamada, Y., Goto, D., Sawada, M., Miyoshi, T., Niwa, Y., Hara, M., Ohno, Y., Iga, S., Arakawa, T., Inoue, T., Kubokawa, H. (2014) The Non-hydrostatic Icosahedral Atmospheric Model: Description and development. Progress in Earth and Planetary Science. 1, 18. doi:10.1186/s40645-014-0018-1
3. Satoh, M., Stevens, B., Judt, F., Khairoutdinov, M., Lin, S., Putman, W.M., Düben, P. (2019) Global Cloud-Resolving Models. Current Climate Change Reports, 5, 172-184. doi:10.1007/s40641-019-00131-0
4. 佐藤正樹, 八代尚 (2013) 「全球非静力学モデルNICAM を用いた京コンピュータによる台風予測シミュレーション」 日本シミュレーション学会誌「シミュレーション」, 第31巻第4号, 204-209.
5. 佐藤正樹, 斉藤和雄, 八代尚 (2013) 防災・減災に資する気象・気候・環境予測 -台風予測およびメソ気象予測- 計算工学, 18, 2881-2884.
6. 佐藤正樹, 山田洋平, 杉正人, 小玉知央, 野田暁 (2019) 全球非静力学モデルNICAMによる台風研究. 月刊海洋2019年7月号・号外.