メンバー

遠藤 一佳

ENDO, Kazuyoshi

教授
地球生命圏科学講座

居室: 理学部1号館531
電話: 03-5841-2534
ファックス: 03-5841-4555
メールアドレス:
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研究分野

分子古生物学・貝殻形成論

研究内容

 私はこれまで地質学,古生物学をベースにしつつ,現在の生物のDNAに刻まれた情報を重要な情報源として,地球と生物の相互作用の歴史(進化)を読み解くことを主な研究課題としてきました.これまでの研究内容は,(1)動物門の起源や骨格形成機構の進化など生物の大構造の形成に関する生命地球科学的研究,(2)種,属など比較的低次分類群レベルでの進化に関する自然史科学的研究,(3)古生物の持っていたゲノムやタンパク質に関する分子古生物学的研究という三つのカテゴリーに分けられます.
 (1)生命地球科学的研究: 「カンブリア紀の爆発」という地質時代で最大級の境界事変についての理解を主目的に,(a)門レベルの分子系統推定,(b)貝殻タンパク質の構造・機能・進化,(c)ボディプラン形成の進化発生学などの研究を行っています.(a)では,腕足動物のミトコンドリアゲノムの全塩基配列の決定を行い,保存された遺伝子配置とランダマイズされた遺伝子配置を統計的に区別する方法を確立しました.(b)では,貝殻形成で重要な役割を果たす酸性貝殻基質タンパク質の構造を世界で最初に解明し,酸性基質タンパク質が生体鉱物学最大の難問とされる「カルサイト−アラゴナイト問題」を解く鍵であることを示しました.(c)では,棘皮動物と軟体動物のHox遺伝子のクラスター構造を明らかにしました.また,軟体動物と腕足動物において発生遺伝学の実験系を確立し,bmp2/4遺伝子が貝殻のらせん成長に関与している可能性があることを発見しました.
 (2)自然史科学的研究: 生命の一つの本質はその多様性にあります.その一端を理解するため,現世の腕足動物の分類,生態,分子系統の研究を進め,特にシャミセンガイ類については,個体群レベルの遺伝構造の研究を行い,従来同一種とされてきた北太平洋の個体群中に複数の隠蔽種が含まれることを見出しました.また,爬虫類,貝形虫類,放散虫類など古生物学的に重要な分類群の分子系統学的研究も行っています.
 (3)分子古生物学的研究: 硬組織中の基質タンパク質は,分子化石として化石中に保存されます.これらの化石タンパク質から生物学的情報を得るために,免疫学的手法による分析や,質量分析計による構造解析に取り組んでいます.また,最節約法や最尤法により,現在のゲノム情報から過去の生物のゲノムを復元する研究も行っています.

主要論文・著書

1. M. Iijima, I. Sarashina, T. Takeuchi and K. Endo, “Expression patterns of engrailed and dpp in the gastropod Lymnaea stagnalis”, Dev. Genes Evol., 218 (2008) 237-251.
2. K. Endo, Y. Noguchi, R. Ueshima and H. T. Jacobs, “Novel repetitive structures, deviant protein-encoding sequences and unidentified ORFs in the mitochondrial genome of the brachiopod Lingula anatina”, J. Mol. Evol., 61 (2005) 36-53.
3. D. Tsukamoto, I. Sarashina and K. Endo: “Structure and expression of an unusually acidic matrix protein of pearl oyster shells”, Biochem. Biophys. Res. Comm., 320 (2004) 1175-1180.
4. 遠藤一佳:「『カルサイト−アラゴナイト問題』に挑む〜分子生物学で迫る生体鉱物学最大の難問〜」日本地球惑星科学連合ニュースレター,4,(2008)6-7.
5. 遠藤一佳:「腕足動物の起源とボディプラン進化」,化石,81 (2007) 57-66.
6. 遠藤一佳:「生体高分子と歴史情報」,小沢智生瀬戸口烈司・速水格(編)「古生物の科学第4巻 古生物の進化」,朝倉書店,(2004)111-138.