メンバー

田中 宏幸

TANAKA, Hiroyuki

教授
地震研究所

居室: 地震研究所2-209
メールアドレス:
HP: http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/ht/workshop08/index.html

 

研究分野

高エネルギー地球物理学

研究内容

非日常的なスケールを対象にする地球物理学と自由な発想でわが国の科学分野を先導してきた素粒子物理学とが統合してできる古くて新しい研究分野です。異なる分野間を統合することによる新科学領域の開拓を強力に推進します。
当研究チームでは透過性のよいミュオンやニュートリノなどの高エネルギー素粒子を用いて地球内部の研究を行っています。宇宙線を利用したミュオンやニュートリノでは「対象の厚さ」と「透過粒子数」の自由度が存在し、これらを効果的に利用する事により、山体、断層、あるいは地球内部を探るプローブとして利用する事が可能です。我々は世界に先駆けてこのプローブを用いた地球内部のイメージングを実証し、それを利用したミュオグラフィー技術を開発してきました。2007年5月、世界で最も有名な雑誌の一つである「ネイチャー」リサーチハイライトのトップに”Cosmic rays peek inside (宇宙線が中身をのぞく)”という刺激的なタイトルの記事が掲載されました。ここでは、宇宙線ミュオンによる火山内部密度の決定が華々しく紹介されると共に、この発見のおかげで火山噴火予知に関する研究が画期的に進むかもしれない、という展望が報道されました。
既に1km以内の対象の内部イメージング作成には成功して いて、高効率のデータ読み出しも達成しています。実用的なミュオグラフィーを実現するには、さらにバックグランドノイズの低減が必要と考えられています。最近は多層の素粒子検出器を使い組み合わせたカロリメータを使い、バックグランドノイズの低減を図っています。また、巨大ニュートリノ検出器を用いた地球全体のイメージングを行う研究も行っています。
未だに知られざる領域がほとんどの地球内部現象を、世界に先駆けて解明することにより、21世紀における地球科学における新しい潮流が当研究室から生み出されるものと期待されます。

主要論文・著書

1. Hiroyuki K.M. Tanaka, Tomohisa Uchida, Manobu Tanaka, Hiroshi Shinohara, Cosmic-ray muon imaging of magma in a conduit: Degassing process of Satsuma-Iwojima Volcano, Japan, Geophys. Res. Lett., 36, L01304, 2009
2. Hiroyuki K.M. Tanaka,Tomohisa Uchida, Manobu Tanaka, Minoru Takeo, Jun Oikawa, Takao Ohminato, Yosuke Aoki, Etsuro Koyama and Hiroshi Tsuji, Detecting a mass change inside a volcano by cosmic-ray muon radiography (muography): First results from measurements at Asama volcano, Japan, Geophys. Res. Lett., 36, L17302, 2009
3. M. C. Gonzalez-Garcia, Francis Halzen, Michele Maltoni, and Hiroyuki K. M. Tanaka, Radiography of Earth’s Core and Mantle with Atmospheric Neutrinos, Physical Review Letters, 100, 061802, 2008
4. 田中宏幸, ミュー粒子を用いた火山内部のイメージング, 日本物理学会誌, 65, 2, 70-80, 2010
5. 田中宏幸, 宇宙線で地球・火山を透視する, 科学, 79, 5, 507-512, 2009
6. 田中宏幸, 原子核写真乾板を用いた火山体の宇宙線ミュオンラジオグラフィ, 日本写真学会誌71, 5, 318-323, 2008