メンバー

小原 一成

OBARA, Kazushige

教授
地震研究所

居室: 地震研究所1号館508
電話: 03-5841-8286
ファックス: 03-5841-8265
メールアドレス:
HP: http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/obara/index.html

研究分野

観測地震学・スロー地震学・地震波動伝播解析学

研究内容

最近、スロー地震という、奇妙な現象が見つかってきました。通常の地震よりもゆっくりした断層すべりによって、揺れを伴わない、あるいは揺れ方がとてもゆっくりで微弱であることがスロー地震の特徴です。これらのスロー地震は、20世紀末に日本全国に展開された地震・測地観測網によって次々と発見され(例えばObara, 2002, Science)、その後、環太平洋の各沈み込み帯でも見つかってきました。現在でも、新たな観測を展開したり、解析手法が開発されるたびに、新しいスロー地震が発見されており、世界的にも非常にホットな研究テーマとして注目されています。特に興味深いのは、同じ沈み込むプレート境界面上で、多様なスロー地震が巨大地震震源域を取り囲むように発生しており、巨大地震と何らかの可能性が指摘されている(例えばObara and Kato, 2016, Science)という点です。実際に、隣り合う異なるタイプのスロー地震同士では、密接な相互作用が観測されていますので、隣接する巨大地震に対して同様の相互作用が働いているかもしれません。そこで、これらのスロー地震と巨大地震との関連性を解明することを目標として、スロー地震の活動様式の解明に関する研究、新たなスロー地震現象の検出や活動状況把握の高精度化を図るためのモニタリング手法の開発研究を進めています。スロー地震研究については、2016年より科学研究費新学術領域研究「スロー地震学」プロジェクトが5年計画で開始されました(領域代表:小原一成)。このプロジェクトでは、地球物理学以外の学問分野との連携に基づいて、スロー地震の発生様式だけではなく、発生環境・発生原理の解明も目指しているため、様々なアプローチでスロー地震に関する研究を行なっています。
ところで、日本国内には約1000箇所に高感度地震計が設置され、ほぼリアルタイムで連続波形データを取得することができます。これらのデータには、まだ認識されていない未知の現象が含まれている可能性があります。また、観測される地震波形データの中には、未知の地下構造に起因する変換波が含まれることがあります。これらの特徴的な地震波動伝播を解析し、地下の不均質構造を解明するための研究も行なっています。

主要論文・著書

1. K. Obara, 2002, Nonvolcanic deep tremor associated with subduction in southwest Japan. Science, 296, 1679.
2. K. Obara and A. Kato, 2016, Connecting slow earthquakes to huge earthquakes, Science, 353, 253-257.
3. Hirose, H., Y. Asano, K. Obara, T. Kimura, T. Matsuzawa, S. Tanaka and T. Maeda, Slow Earthquakes Linked Along Dip in the Nankai Subduction Zone, Science 330, 1502 (2010).
4. 小原一成,2009,フィリピン海プレート沈み込みに伴う西南日本のスロー地震群の発見,地震,61,S315-S327.
5. 小原一成,2001,S波エンベロープ拡大現象,地震,54,159-170.