研究分野
高圧地球科学・地球深部物質学
研究内容
廣瀬研究室では、天然のダイヤモンドと高出力レーザーを用いた「レーザー加熱式ダイヤモンドセル」と呼ばれる装置を用いて、地球の中心を超える超高圧高温環境を静的に作り出すことができます。この装置で地球内部のあらゆる物質を実験室で合成できるのです。
1.地球や惑星の深部はどうなっているのか?
地球や惑星の“構造”や“物質の状態”、さらには“進化”を理解する上で重要なのが、高圧高温下での状態図です。地球表層にある物質のほとんどは高圧下で相転移を起こし、その結晶構造が変化して異なる物性を持つようになります。あらたな相転移の発見はもちろん重要ですし、その圧力や傾きを精度良く決めることも大切です。放射光X線を用いた高圧下でのその場観察に加え、常圧で回収した試料の内部を切り出して組織や化学組成を詳細に観察することも有力な手段です。
2.地球はどのようにして出来たのか?
初期の地球では、ジャイアントインパクト、マグマオーシャン、コアとマントルの分離など、一連の大きなイベントがあり、それらを通じて、地球は大気・マントル・コアへと分化したと考えられています。これらの大イベントの詳細はまだよく理解されことは65年も前から知られているにも関わらず、現在でも大きな謎とされています。この軽元素を同定することも、地球の形成を理解する大きな手がかりになります。軽元素を含む鉄合金の物性を調べてコアの観測値と比較する研究の他、高圧高温下におけるマントルとコアの化学平衡や、マグマオーシャンの結晶化を理解する必要があります。
3.地球はどのように進化してきたのか?
地球の熱的・化学的進化を理解するには、熱伝導率・粘性・化学平衡・元素分配などを地球深部の環境下で測定する必要がありますが、過去の超高圧下での測定はかなり限られています。コアの熱進化を計算するのに重要な、鉄の熱伝導率をコアの高圧高温下で初めて測ってみたら従来の推定値よりも3倍高かった、というのは最近わかった話です。また、超高圧実験の試料は小さいので化学分析がこれまで困難でしたが、収束イオンビームという装置の導入により、今では比較的容易に超高圧下での化学反応や元素分配を調べられるようになっています。
主要論文・著書
1. Murakami, M., Hirose, K., Kawamura, K., Sata, N., Ohishi, Y., Post-perovskite phase transition in MgSiO3, Science, 304, 855–858, 2004. 2. Tateno, S., Hirose, K., Ohishi, Y., Tatsumi, Y., The structure of iron in Earth's inner core, Science, 330, 359–361, 2010. 3. Hirose, K., Morard, G., Sinmyo, R., Umemoto, K., Hernlund, J., Helffrich, G., Labrosse, S., Crystallization of silicon dioxide and compositional evolution of the Earth's core, Nature, 543, 99-102, doi:10.1038/nature21367, 2017. 4. 廣瀬 敬、ついに見えてきた地球コア直上の世界、日経サイエンス、2007年1月号、42-49. 5. 廣瀬 敬、マントル進化の謎を解くマントルD”層 6. 廣瀬 敬、「できたての地球〜生命誕生の条件」、岩波科学ライブラリー |