研究分野
宇宙鉱物学・実験宇宙物理化学・銀河物質循環学
研究内容
恒星は進化の終わりに大量のガスや星周ダストと呼ばれる鉱物や有機物などの固体微粒子を星間空間に放出し,それらが次世代の恒星・惑星系の原材料となります.太陽系も今から46億年前に,ダストやガスから形成しました.そして,やがては星間空間へ物質を供給する側となるでしょう.こうして物質が恒星と星間空間でやりとりされながら進化することを”銀河物質循環”とよびます.
始原的隕石中には,ごく稀に太陽が生まれるより前に形成した星周ダストの生き残り(プレソーラー粒子)がみつかります.プレソーラー粒子一粒一粒に残された形成・変質の履歴と,銀河系でおこるダストの形成や変質の一般的描像を比較することによって,太陽系原材料の銀河系における特殊性・普遍性が明らかになり,銀河物質循環における太陽系の位置付け,そして我々の太陽系そのものへの理解が深まるでしょう.
そのために,(1)隕石中に含まれるプレソーラー粒子の鉱物学・宇宙化学分析,(2)宇宙環境を模擬したダスト形成・変質実験,そして,(3)進化末期の恒星や原始惑星系円盤でのダスト形成に関する観測,を組み合わせた研究をしています.太陽より一世代前の恒星から太陽系形成までの歴史を物質科学的証拠を伴って明らかにすることで,天文学と地球惑星科学の境界領域を開拓し,銀河系における太陽系の新しい位置づけを構築しようとしています.
主要論文・著書
1. Takigawa A., Kim T-H., Igami Y., Umemoto T., Tsuchiyama A., Koike C. Matsuno J., and Watanabe T. (2019) Formation of transition alumina dust around AGB stars: condensation experiments using induction thermal plasma systems. The Astrophysical Journal Letters, 878:L7 (8pp). 2. Takigawa A., Stroud R. M., Nittler L. R., Alexander C. M. O’D. and Miyake A. (2018) High-temperature dust condensation around an AGB Star: Evidence from a highly pristine presolar corundum. Astrophys. J. Lette. 862, L13 (6 pp). 3. Takigawa A., Kamizuka T., Tachibana S. and Yamamura I. (2017) Dust formation and wind acceleration around the aluminum oxide–rich AGB star W Hydrae. Science Advances 3, eaao2149. 4. 瀧川 晶, 橘 省吾, 永原裕子, 小澤一仁, 宮田隆志「コランダム成長異方性を用いた星周ダスト形成条件の推定」(2010) 日本惑星科学会誌『遊星人』, 19, 82-88. |